日本からオランダへー税金はどうなるの?(はじめに)

最終更新: 2020年1月4日


 
◎ 税務上の「非居住者」と「居住者」について

外国への転居は日本における課税関係を一変させます。

それは、転居によって、個人の課税上の立場が

居住者」から「非居住者」に変ってしまうからです。

1)「非居住者」と「居住者」の違い

日本に住所・居所を持たない個人は、所得税法上「非居住者」と呼ばれます。

「居所」とは簡単にいうと「住所」以外の生活の拠点のことです。

もし、住所を海外に移しても実質的な生活の拠点(=居所)が1年以上

日本に残れば、その間日本の税法上「居住者」として取り扱われます。

また、日本国籍保有者については、本人の住所だけでなく生計を一にする家族

(配偶者その他の親族)が国内にいるかどうか、

本人の国内における仕事・資産の状況もあわせて「居住者」・「非居住者」の

いずれに該当するか判定することになっています。

このように、「非居住者」「居住者」の判定には、必ずしも形式的な住所だけでは

割り切れないという曖昧さが残ります。

こうした判定の結果、もともと日本国内に住所・居所を有していた個人が、

途中で日本国内の住所・居所をなくしたということになれば、

その時点で課税上の立場が「居住者」から「非居住者」に変わります。

2)「居住者期間」と「非居住者期間」で異なる課税関係

非居住者になったからといって、その後日本の所得税を納めなくてすむとは限りません。

非居住者は原則的に国外で生じた所得(国外源泉所得)については

日本で課税されませんが、その後も日本国内で生じた所得(国内源泉所得)のうち

一定のものについては日本で課税されます。

所得税法は、所得をその源泉ないし性質に応じて10種類に分類しており、

それぞれの所得の種類ごと、

さらには所得を得た個人が居住者か非居住者かに応じて課税方法・税率を定めています。

たとえば、

会社の役員・従業員として支払われている給与(所得の種類は「給与所得」になります)

の場合、日本国内での勤務に対応する金額

→居住者であった期間内は総合課税(所得総額に応じて5~45%の累進税率で課税)

→非居住者になった後の期間内は申告分離課税(一律20.42%の税率で課税)の対象になります。

このように、年の途中で課税される所得の範囲、さらには課税方法(総合課税か分離課税か)や税率が変わることもありますので、

年の途中で居住者が非居住者になった場合は、その前後で期間を区別し、それぞれの期間内に生じた所得を把握する必要があるのです。

3)個人事業者の場合はさらに複雑

非居住者の事業所得は、日本国内の事業所等を通じて行った事業に関係する金額だけが日本で課税対象になります。

したがって、国外に転居するタイミングで国内の事業所を廃止していれば、その後は日本で課税される事業所得はありません
 

逆に、非居住者になった後も、国内の事業所を維持して国内で事業を行っていれば、その部分について所得税が課税されます。

国内の事業所得については非居住者といえども総合課税の対象なので、毎年所得税の確定申告が必要になります。

国内外の事業に共通する必要経費や、どちらの事業所に関係するかはっきりしない収入があると、国内で課税される事業所得の計算が複雑になります。

決算・申告時の手間を考えると、出国後は事業所ごと(または国ごと)に帳簿を分けてしまった方が良いと思います。

💡今回のブログのポイントまとめ

✔︎短期間に国内外に転居を繰り返している方や、複数国に生活の拠点や事業拠点を有している方の課税関係はより複雑になる。

✔国内外で事業所得を別個に計算する必要あり。

✔︎渡航事前に課税関係を検討しておくこと

著者:山口剛史 税理士事務所

プロフィール:

税理士 山口剛史(やまぐち たかし)

クラウドを使って税務・会計サービスを提供

1996年の税理士試験合格後、外資系金融機関に企業内税理士として勤務。

2018年にフリーランスとして活動開始。

国内外で事業を行っている中小企業・個人事業者、

日本で税務申告が必要な外国人の方々を税務面からサポートしています。

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